一部執行猶予 弁護活動の留意点

2018-08-26

 一部執行猶予という制度が近年創設され,運用がなされています。
 一部執行猶予とは,実刑判決の事案について実刑の一部を執行猶予にするという制度です。たとえば,懲役2年6月の刑が科される時,その一部である6か月について,執行猶予2年とするというような方法です。
 この刑が科される時,実際に刑務所に行くのは2年で,残り6か月は直ちには刑務所に行かなくてよく,2年間の間刑の執行が猶予されることになります。薬物犯罪をはじめとして,社会内で治療や再犯防止のための処遇が期待できる犯罪に適用されるものとされています。
 ただ,実刑の一部が執行猶予となり刑が軽くなったように思えますが,基本的に執行猶予期間には保護観察が付されるものとされていることもあり,執行猶予期間も国家による監視下に置かれることとなります。実刑2年6カ月と,実刑2年+執行猶予期間2年のどちらのほうが良いかは価値観によって異なるため一概にはいえないということには注意が必要です。弁護人は,依頼人とよく話し合う必要があります。
 
 一部執行猶予の要件に関しても注意が必要です。
 まず,一部執行猶予は,社会内での更生処遇を図ろうとするものですから,ある程度,再犯可能性の高い犯罪であることが想定されています。通常の裁判では,我々弁護人は再犯のおそれがないことを主張立証しますが,一部執行猶予を狙う弁護活動では,むしろ再犯のおそれがあることが要件になっているため,その主張立証の活動には注意が必要になります。
 また,特に薬物犯罪等では,刑事施設においての処遇に引き続き社会内においても規制薬物に対する依存の改善に資する処遇が実施できることも要件の一つとなっています。刑務所の中でも依存の改善に向けたプログラムが実施されていますから,刑務所に一定期間行った後にも社会内で同様の改善処遇がなされるということを,裁判の時点で主張立証しなければいけないということです。
 犯罪の軽重なども考慮されることとなっておりますので,あまりにも重い類型の犯罪には適用されない可能性が高いものです。

 一部執行猶予というと,単に実刑よりも刑が軽くなるだけという印象を抱いている方もいるかもしれませんが,実際は複雑な要件が定められており,刑が本当に軽いのかどうかも難しい問題があります。そのメリット・デメリットをきちんと理解して,専門的な弁護活動が行われる必要があります。

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