刑事裁判・刑事事件での前科・前歴 ニュースを題材に

2014-11-28

 昨日、大阪で女性の顔や胸などを刃物で刺し大けがをさせたとして逮捕された男性が、殺人未遂の罪で起訴されたとの報道がありました。過去にも殺人や強制わいせつなどの前科があると報道されています。
 この男性は、数年前、京都府舞鶴市内で起きた女子高校生殺害事件でも起訴されました。当該事件で男性は無実を主張し、無罪が確定しています。

 インターネット等では、前科や今回の事件での逮捕があったことから、「無罪になった事件も実はやったのではないか」「犯人だったのに処罰を逃れたんじゃないか」という意見が見られます。
 もちろん無罪が覆ることはもうありませんが、一般の方が、そのように感じるのは無理ありません。裁判官だってそうです。しかし、このように「前科があるから今回もやったはずだ」という推論は、刑事裁判では原則許されません。

 ひとつのたとえ話をします。
 あなたは5人家族です。父、母、姉、弟と一緒に住んでいます。ある時冷蔵庫にあった父親のプリンがなくなりました。あなたは以前、冷蔵庫にあった母親のアイスを勝手に食べて怒られたことがありました。でも今回はやっていません。それにもかかわらず、昔似たようなことがあったからあなたが食べたと決めつけられたら、納得できないのではないでしょうか。

 検察官は、事件をその人が起こしたことを証拠で証明しなければなりません。「前科があるから今回もやったはずだ」というのは、証拠に基づく証明ではなく、単に偏見です。それにもかかわらず、(今回のインターネットでの意見がそうだったように)人はそのような偏見を抱きやすいのです。だから、裁判官や裁判員が誤った偏見による判断をしないように、前科によって犯罪事実を証明することは禁じられているのです。 

 プリンを食べたのは、今度は姉かもしれないし、もしかしたら弟かもしれません。前にあなたが食べてしまったことがあったとしても、それで決まるわけではありません。むしろ、お父さんが、あなたがまたやったんじゃないかという予断を持ってしまうと、冷静に真実を見分けることができなくなってしまいます。
 そこで、とりあえず過去のことは考えないで、今回のプリン失踪事件についてだけ考えましょう、という理性的な考え方を、刑事裁判は採用しているのです。

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