否認事件の戦い方

「否認事件」とは、疑われた犯罪を起こしたことを否定して無罪・無実を主張する事件や、起訴された罪の一部を否定する事件をいいます。

以下では、否認事件の基本的な戦い方を、捜査段階、公判段階に分けて記述します。

 

1 捜査段階

身に覚えがない罪で逮捕されてしまった、そんな時はどうすればよいのでしょうか。

 

一刻も早く弁護士を呼べ!

一刻も早く弁護士を呼ぶことが最重要です。

逮捕された人も、留置場から弁護士を呼ぶことができます。もちろん、直接、当事務所の弁護士を呼んでいただいてもかまいません。ご家族に連絡し、弁護士を探してもらってもよいでしょう。刑事事件に強く、頻繁に面会(接見)してくれる弁護士の選任が推奨されます。

弁護士に心当たりがない場合は、「当番弁護士」といって、弁護士会を通じて弁護士を呼ぶことができます。

そして、弁護士に助言を受けられるまでは、捜査機関に話をしないでください。
「弁護士と相談してから話す」と言ってもらえば、まったく問題ありません。

 

依頼人の話を徹底的に聞く

最も重要なことは、「じっくり話を聞く」ということです。

ご依頼人の話は、すべての弁護活動の基礎となるものです。ですから、ご依頼人の話を徹底的に聞くことは、すべての弁護活動において最も重要です。

ご依頼人の話を聞く際には、事実関係を正しく把握する事情聴取の技術が必要です。
また、1回の接見だけで事実関係がすべて聞き取れるわけではありません。
捜査段階では、頻繁に接見を重ね、とにかく丁寧にご依頼人の話を聞くということが何よりも重要になります。

当事務所では、「依頼人の話を徹底的に聞く」ことを、すべての弁護活動の基礎として重視します。捜査段階においては、ご依頼人との接見を何より重視し、頻繁な接見を行うことを信条としています。

 

否認事件こそ、黙秘権を有効活用せよ

「黙秘権」とは、取調べや裁判で黙っていることができる権利をいいます。

身に覚えがない事件では、自分の無罪・無実を捜査機関にわかってほしいという気持ちになり、話をしたくなるものです。しかし、捜査機関は、疑いのある被疑者を立件し、裁判にかけることが役割です。捜査機関は、疑わしいと思ってあなたを逮捕しています。そのような捜査機関が、無罪の主張をやすやすと聞いてくれることは、まずありません。
むしろ、こちらが話すことをヒントに、有罪とするための証拠づくりを進めるのが通常です。あなたが話したことも、あえて不合理なように書類にまとめてサインを迫り、有罪とするための根拠にさえしようとします。

ですから、否認事件こそ、黙秘権を有効活用すべきなのです。

検察官が、有罪を証明する責任を負っているのですから、こちらからヒントを出す必要は全くありません。黙秘権を行使することで、証拠不十分であるとして不起訴になる例は、枚挙にいとまがありません。その意味で、黙秘は最大の武器なのです。

もちろん、すべでの否認事件で「完全黙秘」がベストだというものではありません。黙秘権をどう使うのかは、事件ごとに異なります。捜査の進展によっても異なります。どのような方針がベストかは弁護士でないと判断できないでしょう。頻繁に接見をしてくれる弁護士を選任し、随時助言を受ける必要があります。

 

自白を迫る捜査機関への対応

捜査機関は、否認している被疑者に対して、罪を認めろと迫ってきます。よくある刑事ドラマを持ち出すまでもなく、被疑者を怒鳴りつけて自白を迫るやり方は、現実にも日常的に行われています。犯罪を犯していないにも関わらず、「やった」とうその自白をしてしまう例も、多くあります。

もちろん、黙秘権を行使していれば自白することはありません。しかし、この権利を行使しているにもかかわらず、むしろ権利を行使しているときにはなおさら、「自白」を迫る強い圧力をかけてくるのです。

このような捜査機関の圧力に屈しないためには、頻繁な弁護人の接見により助言を受けることが最も重要です。弁護人は、不当な取調べをする捜査機関に抗議をし、取調べの可視化(録音・録画)を申し入れるべきです。

 

このようにして、捜査段階では、黙秘権を有効活用して徹底的な防御を行い、嫌疑がない、または不十分という理由により、不起訴処分を得ることが、最大の目標となります。

 

2 公判段階

捜査段階で否認していても、裁判になってしまう場合があります。この場合、裁判では無罪判決獲得のために戦っていきます。

 

検察官の証拠を徹底的に吟味せよ

裁判になると、検察官は、有罪を証明しようとする証拠を提出してきます。この検察官の証拠によって、有罪が証明できるのかが、まず問題になります。

弁護側は、まずこの証拠を徹底的に吟味しなければなりません。検察官が有罪を証明しようとする証拠の中にも、無罪のヒントが隠れていたり、検察官が気づかない視点が隠れていたりすることは珍しくありません。

証拠に矛盾があったり、不合理な部分があったりすることも稀ではありません。
弁護人は、検察官の提出しようとする証拠を徹底的に吟味し、無罪獲得に役立つ点を洗い出します。

 

証拠の開示を要求せよ(証拠を収集せよ)

証拠の吟味とは、検察官が提出した証拠に限られません。提出した証拠は検察官の手持ち証拠の一部であり、それ以外にも検察官はたくさんの証拠を持っています。過去には、それらの証拠が隠されていたことによって、無罪の発見が遅れたという事例もありました。

弁護側は、検察官に対し、証拠の開示を要求することが極めて重要です。「公判前整理手続」という裁判の準備手続をすることになった事件では、制度上、かなりの証拠の開示を請求できます。そうでない事件でも、近年、検察官は任意の証拠の開示に応じることが多くなりました。

いずれにしても、検察官に対して、弁護人が開示を求めなければ、闇に埋もれてしまうかもしれないのです。開示された証拠の中に、無罪獲得のために役立つ証拠があることも珍しくないのです。
開示の際には,どのような証拠が存在するのかを推測しなければなりません。刑事事件に精通した弁護人でなければ,効果的な開示を求めていくことは難しいでしょう。

もちろん、検察官の手持ち証拠の開示もさることながら、無罪に結びつく証拠を、弁護側独自で積極的に収集すべきことは当然です。

 

無罪に向けての一貫した方針の構築と実践  

検察官の証拠をすみずみまで検討したら、無罪に向けての一貫した方針構築が必要となります。すべての証拠を矛盾なく説明でき、共感できるような事件のストーリー、事件の説明を考察し、それをもとに無罪獲得のための一貫した方針を構築すべきです。

裁判では、相手の証人に対する尋問や、こちらからの証拠提出が行われます。これらの証人尋問や、証拠提出は、この無罪獲得のための方針を常に意識したものでなければなりません。方針があいまいなまま尋問や証拠を提出しても、むしろ有害です。

方針をきめないまま訴訟活動を行うと、すべきだった尋問や、提出すべきだった証拠を見逃してしまうことすらあります。

特に、否認事件では相手の証人に対する反対尋問の出来が裁判の結果を左右します。反対尋問は、相手の証人に対して行うものですから、こちらに有利な尋問をするには、綿密な準備が必要です。

たった1問の質問が結果を変えることもあります。

無罪獲得のための方針に沿って、証人から何が獲得できるかを常に意識した尋問がなされなければなりません。

無罪に向けて一貫した方針に基づいた訴訟活動を実践することは、無罪獲得のための最低限の条件です。

 

高度な法廷技術に基づいた法廷弁護活動

いかに周到な準備をしても、刑事裁判では、常に予想外の出来事が起こるものです。証人が予想外の証言をしたり、検察官が予想外の主張をしたりなど、刑事裁判では、その場での臨機応変な対応が弁護人に要求される場面が多くあります。

無罪に向けた一貫した方針に従いつつも、予想外の出来事に臨機応変に対応するには、極めて高度な弁護技術が必要です。証人の発言を聞いて即座に尋問を切り替える尋問技術や、検察官の主張を聞いて即座に反論する弁論技術が必要です。正確な法的知識に基づいた、即座の異議申立等も重要です。

当事務所では、刑事裁判で臨機応変な対応ができるようにすべく、日々研鑽を積み、弁護技術を磨いています。

 

否認事件の裁判において、無罪獲得のために必要な技術は、ここに挙げられたもののみではなく、ご紹介したのは基本的な考え方の一例です。

裁判で無罪を獲得するためには、証拠に基づいた明確な方針に基づく実践と、高度な尋問技術や弁論技術が必要不可欠です。

 

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