冤罪と裁判所の役割

2019-03-09

 残念ながら冤罪はあります。
 それは,これまで,裁判で有罪が確定して服役していた(あるいは死刑判決を受けていた!)人が,のちに無罪とされるべきはっきりした証拠が出てきて無罪となるケースが後を絶たないことからも,はっきりしています。
 冤罪の原因はたくさんあります。
 警察官や検察官がひどい取調べをして,うその「自白」をしてしまうケースもあります。中には,暴力や,ほとんど拷問と思われるような「取調べ」もあり,実際はやっていなくても自白に追い込まれてしまうケースがあったことは,歴史が証明しています。
 悪意のある自称「被害者」や,勘違いや思い違いをした「目撃者」の証言によって,有罪に追い込まれてしまうようなケースもあるでしょう。自分の責任を軽くしたいとたくらむ「共犯者」の証言によって本当は共犯ではないのに共犯扱いされるというケースもあると考えられます。
 証拠が薄いのに推測を重ねた結果,誤った認定に至ってしまうような事案も少なくないと思います。
 しかし,刑事裁判のルールが徹底されていれば,この冤罪のリスクは最小限にすることができます。つまり,常識に従って判断し,証拠を検討した結果罪を犯したことが「間違いない」といえなければ無罪としなければならないというルールです。このルールは,不確かなことで人を罰しないように,一人の冤罪も生むことがないようにと,歴史を踏まえて法が定めた大切なルールなのです。これを使うのは裁判所です。裁判所は,人の話に本当に間違いないかを厳格に判断し,証拠から言えることと言えないことをはっきり区別して不当な推測は厳に慎み,そして,間違いないといえなければ無罪という基準をきちんと用いて裁判しなければなりません。
 では今日本の裁判所がそうなっているかというと,残念ながら,そうなっていないと感じられるのが,刑事弁護に携わる者としての偽らざる実感です。裁判所の推論は,しばしば,あまりにも簡単に有罪方向で推測を重ねすぎています。しばしば,問題のある証言を,大した理由もないのに「信用できる」と言い切ってしまいます。そして,簡単に「間違いない」と言いすぎです。
 多くの場合,個々の事件では,実際に罪を犯しているのか無実なのかは神様と本人にしかわかりません。裁判所も,検察官も,弁護人も,厳密にはわかりません。わからない中で何をするか。それは刑事裁判のルールを守って裁判することです。今日本の裁判所で行われている事実認定は,残念ながら,冤罪の被害者をたくさん生んでいるのではないかと思えます。

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