少年審判での証人尋問

2020-04-30

少年事件では,成人の刑事事件と大きな違いがあります。その違いの一つが,伝聞法則の適応がない上に,職権で証拠調べがされるということです。
例を挙げます。家庭裁判所に送られた証拠の中に,共犯者Aの供述調書があり,少年が犯人だ,という記載があるとします。少年は犯人でないと主張しています。
成人の刑事事件の場合,このAの調書を不同意にすれば,検察官はAの証人尋問を請求するか,Aの供述を証拠として請求しないかという選択を迫られます。したがってAの調書を不同意にすれば,多くのケースではAの証人尋問で反対尋問をすることができます。
しかし少年事件では,裁判官は証拠の全てに目を通しますので,Aの供述調書の内容も把握します。その上で,裁判官が必要と考える場合にしか,Aの証人尋問は実施されません。証拠調べを申し出る制度はありますが,裁判官は必ずそれを採用しなければならないわけではありません。したがって,Aの話は少年にとって不利に働くにもかかわらず,反対尋問でAの供述を攻撃し,弾劾する機会を与えられないまま,Aの供述を理由に少年が不利益な処分を受けるという事態が起こり得るのです。

もっとも裁判官の裁量は無制限に認められているわけではありません。たとえば東京高等裁判所平成29年7月28日決定(平成29年(く)第264号第1種少年院送致決定に対する抗告申立事件)は以下のように述べています。
「そもそも,少年が非行事実を争い,非行事実の核心部分に関する供述内容の真実性を争っている場合には,少年審判手続においては,伝聞法則の適用がないとはいえ,的確な心証を形成するためにも,あるいは,原供述者に対する反対尋問権の保障という適正手続の観点からも,特段の事情(客観的な証拠が存在することにより証人尋問をするまでの必要性がない,あるいは,性犯罪被害者など証人尋問を実施することが極めて不相当であるなど)がない限りは,その供述者に対する証人尋問を実施することが必要というべきである。」
つまりある供述が非行事実の核心部分に関するもので,その供述の信用性が争われているのであれば,特段の事情がない限り,原則として証人尋問を実施することが必要であるとされているのです。

少年に対する手続保障は軽視されがちです。付添人は成人の刑事事件以上に,裁判官の判断に目を光らせ,きちんとした反証の機会が与えられるように手を尽くさなければなりません。

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