東京高裁の無罪判決と刑事裁判のルール

 オウム真理教の元信者の菊地直子さんに、東京高等裁判所が逆転無罪判決を下したとの報道がありました。 
 報道などによれば、東京高等裁判所は、菊地直子さんが「テロ行為を行うことを認識して手助けしたと認めるには合理的な疑いが残る」と判断し、第一審の裁判員裁判の判決を破棄したとされています。 

 この「合理的な疑いが残る」というのは、刑事裁判のルールに基づく表現です。刑事裁判では、証拠を検討した結果、常識に従って判断し、罪を犯したことが間違いないといえなければ、無罪としなければいけません。罪を犯していないのではないかという疑問が残れば(これを「合理的な疑いが残る」と表現します)無罪なのです。
 この刑事裁判のルールは、やってもいない人が処罰されてしまう「冤罪」という不正義が絶対に生まれないようにするために、厳格に守られなければならないルールです。
 このルールが守られなければ、私たちは不確かなことで処罰され、刑務所に入れられてしまうような社会になってしまいます。それでは、私たちが安心して生活することはできません。私たちの自由を守るためにも、この刑事裁判のルールは徹底されなければならないのです。

 東京高裁の判断が正しいとすれば、第一審の裁判員裁判はこの刑事裁判のルールを正しく適用せずに有罪判決を下してしまったということになるでしょう。
 私たちは、(この事件がそうだったかはわかりませんが)特に、この事件でいう「オウム真理教」のように、世間から良く思われていない人、少数者が被告人となった時、このルールがきちんと適用されるかどうか、危惧しています。たとえば「オウムは許せない」というような気持ちが潜在的に冷静な判断を誤らせ、不確かな証拠しかなくても処罰するという判断につながりかねないということです。
 しかし、それは正しいことではありません。誰もが、いつ、少数派になり、世間からよく思われない立場になるかわからないこの社会において、少数者に対してきちんとルールを徹底することが、私たちの自由を守ることにつながるのです。それこそが、刑事裁判のルールを決めた法律が要求している裁判のあり方なのです。 

 まだ判決書の全文が公表されているわけではありませんが、今回の東京高等裁判所の判断は、刑事裁判のルールを徹底する正しい刑事裁判のあり方を示す一つの例といえるかもしれません。

 
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