公判前整理手続・期日間整理手続の請求

2018-10-12

現行の刑事訴訟法では,弁護人は裁判所に対し,事件を公判前整理手続及び期日間整理手続に付することを請求することができ,裁判所は,必要があると認めるときは,この請求を容れることができるとされています(刑事訴訟法316条の2第1項,同条の28第1項)。裁判所は,事案の内容にもよりますが,どのような犯罪をしたか,あるいはしていないかという点が争われる否認事件で弁護人からこのような請求がされた場合,比較的多くのケースで整理手続に付すようになってきているようです。整理手続に付された場合の弁護人の最大のメリットは,検察官に対して弁護人が証拠の開示を請求することができるようになるという点です。多くの証拠に目を通し,検察官との情報格差をなるべく小さくすることが,ベストな弁護戦略を立てることに直結します。

 

もっとも一部の裁判官は,正式な整理手続に付すのではなく,事実上の打ち合わせ(裁判官と検察官と弁護人が法廷の外で話し合うミーティングのようなもの)を繰り返す一方,検察官に対しては任意に証拠を弁護人に開示するよう促すことで,同様の目的を達することができるのではないか,と考えています。そのような裁判官の発言を受けて,整理手続に付する請求を,あえて行わない弁護人も中にはいます。

しかし,このような事実上の整理手続と,正式な整理手続の間には大きな差があります。まず,任意の証拠開示では,本当に法律上開示を要求できる証拠が全て弁護人に開示されているのか,あえて弁護人に開示しないままにされている証拠はないか(検察官が,これは重要ではないと考えて開示対象から外した証拠が,弁護人にとっては重要であることも十分あり得ます),判断することはできません。全ては検察官の裁量により,証拠を開示するかどうかが決められます。正式な整理手続の下で,類型証拠開示請求や主張関連証拠開示請求を行えば,少なくとも法律上の要件に該当しうる証拠については,捜査機関に強制的に証拠を開示させることができます。

また,さらに重要なのが,正式な整理手続では,検察官に証拠の一覧表を交付するよう請求できるということです(刑事訴訟法316条の14第2項以下)。この一覧表を見れば,弁護人は検察官の手元にどのような証拠があるのかを把握し,そのうち弁護人が開示を受けていないものはどれか,把握することができます。どのような証拠を検察官は得られていないか,という点もある程度把握できます。証拠一覧表の記載ぶりなど,改善されるべき点は多々ありますが,弁護方針を練るための証拠収集にあたっては,証拠一覧表は大きな武器となります。

徹底的に争う事件では,公判前整理手続,期日間整理手続に付す請求をするという選択がベストです。そして弁護人には,裁判所を説得し,あるいは交渉して,整理手続に付すという決定を引き出す能力が求められます。

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