勾留理由開示の問題点

2020-06-12

 勾留理由開示とは,公開の法廷で裁判官が勾留の理由を説明する手続です。

刑事訴訟法第82条 
  1 勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
 
 被疑者に容疑が疑われるとき,一定の要件があれば検察官の請求により裁判官が勾留を決定します。
 
刑事訴訟法第60条
  1 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
   ① 被告人が定まった住居を有しないとき。
② 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
③ 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

勾留理由開示は,勾留という大きな人権の制約になる権力行使を裁判官がすることに対して,公開の法廷でその理由を説明させることによりチェックするという,憲法に定められた手続保障です。

 しかし,現実の運用にはいくつかの問題点があります。
① 勾留を決定した裁判官とは別の裁判官が担当することがある
② 裁判官は法律に定められた勾留の要件以上の具体的な説明をほとんどしない
③ どのような証拠に基づいたかの情報開示も甚だ不十分である

 ①については,勾留の決定をした裁判官が理由を説明しなければ,真に勾留を判断した理由は推測でしかなく,法の求める要求を満たしているとは思えません。
 次に,②は,罪証隠滅,逃亡のおそれが認められる,などと法律の文言を繰り返すだけで実質的な理由を説明することはほとんどありません。
 弁護人が,裁判官にさらに釈明を求めても,正面から答えることはありません。
 しかし,法律上勾留する際には勾留状を発付します。勾留状には刑訴法60条のどの要件により勾留されるかが明示されているので,勾留理由開示では,何号に該当するか,ではなく,何故そのように判断したかの実質的具体的理由を言わなければ,憲法・刑事訴訟法がわざわざ勾留理由開示の規定を置いた意味がなくなってしまうのです。

 ③についても,捜査の秘密から答えられない,などと杓子定規な答えがほとんどです。
しかし捜査機関の権力行使をすることこそが裁判所の役割であり,その裁判所の役割を弁護人,あるいは公開の法廷で国民が監視するためには,裁判所が捜査の秘密を盾にするのは,自らの職責の放棄とすら言えます。
 
 勾留理由開示がより実質的に機能するようにならなければいけないでしょう。

Copyright(c) 2018 東京ディフェンダー法律事務所 All Rights Reserved.