被告人の着席位置

 刑事裁判において被告人が座る位置はどこでしょうか。
 長いこと被告人は,弁護人の隣ではなく,弁護人の前に座らされてきました。
 傍聴席から見ると,裁判官が法壇の上に座り,検察官,弁護人が左右に座ります。
 被告人はその弁護人と検察官の間の弁護人席の机の前にイスを置き,そこに座らされて来ました。
 しかし,刑事裁判とは国と被告人の対立です。検察官は国の代表者として職責を担い,弁護人はあくまで当事者である被告人の代理人(援助者)の立場です。
 これを当事者主義といいます。 
 にもかかわらず,被告人を訴訟の客体とみなし,弁護人席の前に座らせることは,当事者主義の考えに反します。
 裁判員裁判が始まったのを契機に,被告人の着席位置を見直そうという動きがはじまり,裁判員裁判では,被告人は弁護人席の隣に座れるようになりました。
 これがあたり前のことで,保釈が認められたり在宅の被告人は,裁判員対象事件外の通常事件でも弁護人の隣に座れることが増えてきました。
 ところが,今だ身体を拘束されている被告人で,裁判員対象事件外の事件では,拘置所が反対するなどの理由で隣に座らされることが認められることが少なく,裁判官によっては在宅の被告人ですら前に座らせる人もいます。 
 被告人を当事者ではなく訴訟の客体と捉えることは,無意識にでも被告人が何かやったからではないかという予断を生み,無罪の推定にも反するものです。
 全ての被告人が当事者として弁護人と並んで座ることを実現しなければなりません。

 

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