解剖医の意見とセカンドオピニオン

 人が亡くなっている事件では,遺体の司法解剖が行われます。
 司法解剖を行った医師は死因などについて一定の意見を述べますが,これが,裁判をしている当事者の主張にとって,有利であることもあれば,不利であることもあります。そこで当事者が考えるのは,第三者の医師に意見を求めに行くことです。医学的な表現では「セカンドオピニオン」と言っていいでしょう。
 検察官がこれを考えるときは,たいてい,解剖医の意見が検察官による有罪の立証に役立たない場合です。医学に限らず科学では,きちんとした科学的根拠をもとに,わかることはわかる,わからないことはわからないと判断することが重要になります。真摯な医師であればあるほど,こうした科学の原則に則って慎重な判断をします。ところが,立証責任を負っている検察官は,「死因不詳」では立証にならないので,もっと積極的な意見を言ってくれる医師を探しに行くことになります。
 こうして,検察官が新たに出してくる医師は,検察官にとって都合のいい意見を断定的に言う医師が必然的に多くなる,というのが弁護活動に携わる側としての偽らざる実感です。そして,解剖医の意見やほかの専門家の意見を聞くと,こうした検察側の医師の意見には特段の科学的根拠がない場合もとても多いものです。
 これにきちんと反論するためには,解剖医の見解を正しく理解したり,弁護側も新たに第三者の医師に相談するなどして,専門的に反論しなければいけないことも多くなります。高度な知識と技術が,弁護人にも要請される場面です。

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