警察による取調べの可視化

警察庁は,警察が逮捕した後の容疑者の取り調べの録音・録画(可視化)について裁判員裁判の対象事件では原則として可視化するなどとした新たな試行指針を定めました。これは,刑事訴訟法の改正に伴い,2019年6月から,裁判員裁判事件については原則として全過程の可視化が義務づけられることになったことから,前倒しで試行していくということでしょう。

 これまでも警察庁では裁判員対象事件で取調べの録画録音をしてきましたが,必ずしも全過程ではありませんでした。
 容疑者が逮捕されると,逮捕勾留期間併せて最大23日間の間に検察官が起訴するかどうかを判断しますが,その間容疑者に対しては,警察官も検察官も取調べを行います。
 検察官の取調べは現在でも裁判員対象事件では,大部分の事件で全過程が録画されていますが,警察官の取調べは,逮捕した直後のみ録画し,その後の調べは録画しないというケースも多くありました。

 取調べの可視化(録画・録音)は,密室で行われる取調べにおいて不当に自白を迫ったり,捜査機関の見立てを押しつけたりすることがあとを断たないことから導入された制度です。
そのため,一部の録画では,録画していないところで不当な圧力をかけ,録画されているところでは適正な取調べを装えば,あとから裁判で取調べが適正であったかどうかを見抜くことが困難になります。
 従って,取調べを可視化するためには,全過程の録画録音をしなければ意味がないのです。

 ただし,今回の刑事訴訟法の改正で全過程の録画録音が義務づけられるのは,裁判員対象事件だけで,全刑事事件の中でごくわずかです。
 しかし,捜査機関の不当な取調べは裁判員対象事件だけではありません。むしろ重大事件でないからこそ,容疑者が捜査機関の圧力に負けてしまうということも珍しくないのです。

 今後この取調べの可視化をいかに拡大していくかが,課題となるでしょう。

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