責任能力を争う刑事弁護 専門家意見の重要性

 ニュースでも,「責任能力」という言葉や,「精神鑑定」という言葉を目にすることがあると思います。刑法は,犯罪を犯した人が,物事の善悪を判断し,自分自身の行動を制御する能力がある場合でなければ,処罰することを認めていません。刑事裁判では,時に責任能力が激しく争われる事件があります。
 当事務所でも,そのような事件をこれまで多数経験しています。
 責任能力が争われるときには,精神鑑定が行われるのがふつうです。精神鑑定とは,精神医学の専門家である精神科医が,被告人の精神状態や精神状態が事件に与えた影響を分析し,一定の意見を述べます。
 この意見は,もちろん,被告人に不利なことも,被告人に有利なこともあります。最高裁判所の判例では,責任能力の判断について,精神医学の専門家の意見がある場合には,その専門的な意見の部分については裁判所の判断をするにあたっても原則として尊重しなければならないとされています。したがって,精神科医の意見が被告人に不利な場合,被告人を守る立場である弁護側は,反論にとても苦労することになります。専門家の意見は基本的に尊重されてしまうので,専門家に対して直接弁護人が反論しても,これをそのまま覆せることは多くはありません。
 そこで重要なのが,弁護側も,きちんと専門家の意見を聞くことです。弁護人も医学の分野の専門家ではありませんから,検察官や裁判所の鑑定が正しいかどうかを検証するためには,専門家の意見を聞くより他ありません。鑑定をした専門家自身に意見を聞くことはもちろん,他の専門家医師へ意見を尋ねに行くことが必要不可欠になります。そして,弁護人は,精神科医の意見の対立を踏まえて,精神科医の拠って立つ意見の前提に問題がないかをチェックしたり,医学的な意見を踏まえて責任能力に関する法律論を展開していく必要があります。
 こうしたノウハウを持っていなければ,責任能力を争う事件で,検察官と対等に闘うことはできません。

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