近接所持の法理

 刑事事件において,窃盗犯罪などで近接所持の法理というものがあります。
 近接所持の法理とは,窃盗事件が起きた時点と時的・場所的に近いときに盗品を所持していたものは,その盗品の入手経路について合理的な説明をしない限り犯人と推定できる,というものです。
 例えばある店から商品が盗まれ110番通報したところ,近くの路上にいた男が盗まれた品を所持しいていた場合,なぜ持っているかをきちんと説明できなければ,犯人の可能性が高い,ということです。 
 例えば,拾ったとか第三者からもらったとか,ということが考えられますが,それ自体合理性があるかどうかは吟味されます。

 刑事裁判では,検察官が常識に照らして間違いない、といえる程度に被告人が犯罪を犯したことを立証する責任がありますが,財産犯(窃盗,強盗)においてこの近接所持の法理は,犯人が誰であるかが争われている事件で,検察官がよく主張します。

 たしかに一般論としては正しい面もあるのですが,近接所持の法理といっても,どの程度の時間や距離の幅までが近接所持と言えるのか,また,その物品の流通状況等によって,間違いないといえるレベルは変わってきます。

 刑事裁判で,近接所持を争う場合にも,そもそも個別の事件において,その物品を所持していることがどのような意味を持つのかを十分に吟味する必要があるのです。

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