公判で自首はどう扱われるか

自首とは何か

刑法は自首について「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」とされています(刑法第42条1項)。

減軽がされた場合、有期の懲役刑ですと、法律上言い渡される刑の上限(長期)及び下限が半分になります。例えば強制わいせつは「6月以上10年以下の懲役に処する」とされていますが、路上で強制わいせつをした後、我に返って反省して近くの交番に駆け込み、自首が成立したとして、減軽が認められると、「3月以上5年以下の懲役」が刑の選択の範囲となります。また、宣告できる刑の幅が変わるだけでなく、実際に宣告される刑が軽くなる傾向にあります。つまり自首したことが有利な情状とされ、刑を軽くする事情として扱われます。

 

どのような点が争われるか

自首が成立するためには様々な要件があります。刑法の教科書でもそれなりに頁をさいて解説されるような論点ですし、相当数の判例が蓄積されていますが、まず問題になりやすいのは「発覚する前」に自首したといえるかどうかです。犯罪事実とその犯人が捜査機関に判明している前に、犯人が、自分がした犯罪事実の存在や内容を捜査機関に告げる必要があります。

ですから、例えば先程の例で、事件後1時間たって犯人が最寄りの警察署に出頭し、さきほど路上で女性を襲ってしまった、と申告したとします。事件の3分後に被害女性が110番通報していたとすると、この申告の時点で犯罪事実の存在や内容自体は捜査機関に発覚していますが、犯人が誰かがまだ分かっていなかったとしたら、自首が成立し得ます。

他方で、出頭するかどうかを迷っていた結果、2日後になったとします。この時点で、前科の記録や目撃証言をもとに、捜査機関の方では犯人が誰か分かっていた場合、その後に出頭しても自首は成立しません。ですから、事件後時間が経たない間に出頭するのはとても重要です。

裁判では、出頭の時点でどこまで警察が犯罪事実や事件を把握していたか、ということや出頭との先後関係がシビアに争われることもあります。必要であれば、捜査を担当していた警察官を尋問し、出頭の時点で判明していた事実の内容を明らかにしなければならないこともあります。

 

また、自発的に行ったかどうかも、争点となることがあります。自首と似て非なるのは、警察官から追求を受けて、罪を認めたようなケースです。ですから先程の例でいうと、事件を起こして逃走を開始した3分後に、犯人がたまたま路上をパトロールしていた警察官から職務質問を受けたとして、その挙動を怪しまれて追求され、観念して「先程路上で女性を襲ってしまいました。」等と認めた場合には、自首は成立しないと言えます。

このように自首が成立するかについては様々な論点があり、自首に関する主張を認めさせるには、深い法律知識や尋問能力等が要求されます。弁護人も自首が成立する事案なのかを仔細に見極める必要があります。

 

自首での減軽を求める場合の注意点

さらに自首を主張する上で重要なのが、法律が「その刑を減刑することができる」としている点です(刑法第42条1項)。つまり自首が成立するとしても、刑を減軽しない、という判断がなされることもあるのです。さらに情状においても、自首をそこまで大きく評価しない、との判断がなされ、結果的に刑がそこまで軽くならない、ということもあります。

 

自首で減軽がなされる根拠としては①自首がされれば真相が解明されることから、減軽という恩恵を与えてこれを促進するという政策的な根拠②自ら犯罪事実を告げて、自身を訴追するよう求める点で、向けられている非難が減少する、との2点が挙げられることが多いと言えます。減軽が認められない事案は、この趣旨に反するような行為をしているケースが多い傾向にあります。例えば自首はしているものの、直後に事件に関係のあるラインメッセージを消去して証拠隠滅を図った、というような場合などです。自首をしなくても速やかに犯罪事実や犯人は捜査機関に判明したはずであるから、自首がなされた意味は大きくない、というような主張が検察官からなされることもあります。

 

弁護人は自首が成立する場合でも安心せず、なぜそれを根拠に刑を軽くしてよいか、丁寧に主張立証する必要があります。特に裁判員裁判では、上記のような自首制度の趣旨を裁判員に分かりやすく説明した上で、政策的な観点からも責任減少の観点からも、軽い刑を言い渡さなければ法の趣旨に反する、との主張を的確に行わなければなりません。

 

なお、現在の裁判実務では、刑の大枠は犯罪行為自体に関する事情(犯情)に基づいて定められ、自首などのそれ以外の事情は、あくまで調整要素として扱われます。しかし執行猶予が認められるかがシビアに争われる事案などでは、自首の成否やそれに基づく減軽の可否が決め手となることもあります。弁護人はあきらめずに自首に関する主張を尽くし、依頼者のために少しでも軽い結論を求めていかなければなりません。

 

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