量刑弁護 執行猶予付き判決の材料を集める

やってしまった行為に対する刑の重さには,再犯可能性が影響します。これ以降は同じような犯罪をしないという説得的な根拠を示すことが,刑を争う事件では1つのポイントになります。特に,懲役刑になるか罰金刑になるか,執行猶予が付くかどうかのような事件では,再犯可能性も無視できない要素です。

ですが,事件を起こした原因を特定することが難しい場合もあります。また,事件を起こした原因の改善策に説得力を持たせることも容易ではありません。

では,原因を特定したり,原因を改善する方法には,何があるでしょうか。具体例を紹介します。

 

原因を特定する例① ご本人から話を聞く

 

原因を特定する最も基本的な方法は,ご本人から直接話を聞くことです。事件当時,何か悩んでいたことはあったのか。違反だとされている事実の原因がなんだと思うか。これについて,最もよく知っているのは,ご本人です。

ですが,ご本人から直接話を聞くときにも,ただ単に聞けば原因が突き止められるわけではありません。本人が考えている原因とは違う部分に真の原因があることもあります。本人が,事実を誤って認識してしまっているから,本人の考える原因が不正確なこともあります。

このように,ご本人がうまく原因を特定できていない場合には,本人から聞いたそれまでの生活歴や生育歴,職業歴から原因を探ることも考えられます。例えば,過去の失敗体験から物事に悲観的になり,事件を起こしたと仮定できるかもしれません。他にも,当時お金に困っていたから,つい出来心で万引きしてしまったという可能性も見つけられるかもしれません。

本人から話を聞くときには,ただ本人の言葉に耳を傾けていても,真実は見えてきません。本人の話を,多角的に見て,見立てを立てて検討してみる,ということも弁護士の重要な技術です。

また,本人だけでなく,ご家族や親しい友人に話を聞くことで,本人の原因を突き止められることもあります。

 

原因を特定する例② 精神科医師との面談・診察の機会を設ける

 

原因を特定する方法としては,精神科医師と面談してもらうことも考えられます。

近年は,知的障害と指定される基準が高いために,一般に比べて知能指数が低いけれど知的障害と認定されない人がいます。また,知的障害の基準に達していても,生活するうえで難がなく,ご本人も周りも気づいていないこともあります。ですが,行為態様の似た性犯罪を繰り返していたり,生活の様子が少し変わっていたり,という側面が表れている場合があります。

このような場合には,精神科医師と面談の機会を設けて,一度診断してもらう方法も考えられます。身体拘束がされていても,接見禁止がついていなければ,面談の機会自体は設けることは可能です。また,場合によっては,認められる可能性にかかわらず,勾留の執行停止の申立てを検討してみることも考えられます。このような面談の機会で,本人も気づいていない原因が見つかることもあります。

 

原因を改善する例① 悪い人間関係から離脱する

 

例えば,首謀者である共犯者からの誘いを断れずに,一緒に強盗致傷事件を起こしてしまったような事例では,共犯者との人間関係を解消することが原因を改善する方法になります。

改善できることの根拠としては,

・自分から会わないようにする

・自分から連絡を取らないようにする

・メールアドレスを変える

・携帯電話を解約して番号を変える

・学校・職場を変える

・住んでいる地域が近いなら引っ越す

等が考えられます。これらの例でいえば,携帯電話を解約した書面,学校や職場の在籍証明書,住民票や賃貸借契約書を,証拠として提出することが考えられます。

もちろん事件の内容や,ご本人とご家族の事情から,どこまでの対策をとるかは変わってきますが,このような事実を1つずつ揃えていくことが,再犯防止の根拠となります。

 

原因を改善する例② 依存症プログラムで成功している実績を積み上げる

 

例えば,万引き依存症,薬物依存症,これらから抜け出せないために犯罪を犯してしまったような事例では,依存症を治すことが原因を改善する方法になります。

依存症は,決して簡単に治るものではありません。ですが,治療に向けて積み重なった事実は,原因改善の根拠になります。例えば,依存症改善プログラムに週2回通った記録,使用したワークブックを証拠として提出することも考えられます。

また,万引きや薬物に手を出す理由が,「このスーパーに行ったとき」である等判明した場合には,一人で外出していないことや,そのスーパーに行かないことを証明することも考えられます。また,「誰にも相談する人がいなくて不安になって薬物を使ってしまう」という場合には,相談できる相手や福祉機関につなぐことも考えられます。

このように,事実を1つずつ揃えれば,再犯防止に説得力が出ます。

 

依頼者と接見で事情聴取する弁護士の役割が重要

 

弁護士は,確かに医療や犯罪心理学の専門家ではありません。

ですが,原因を判明させるために様々な機関と連携し,多角的な視点から原因を特定するきっかけを見つけるのは,弁護人です。また,上記の例に挙げたような改善策は,身体拘束から解放されていれば一層事実を積み上げやすくなります。

弊所では,事件の量刑の見通しを立てたうえで,依頼者の皆様に、執行猶予に向けた再犯防止策をとっていくべきかをご提案します。

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