高等裁判所で逆転無罪判決を獲得した事例

 当事務所の赤木竜太郎弁護士が担当していた傷害被告事件について,東京高等裁判所で無罪判決を獲得しました。

 赤木弁護士は,第一審から弁護を担当しており,第一審は有罪判決を下しました。弁護人が控訴したところ,東京高等裁判所は,第一審の有罪判決を取り消し,被告人に無罪を言い渡しました。

 営業終了後の飲食店店内で,従業員同士で飲み会をしていたところ,アルコール消毒液がかけられた従業員の身体に火がつけられたという傷害事件です。被告人である依頼者は,自分が火をつけたことはないと主張していました。弁護人は,火をつけたのは依頼者ではなく,その場にいた他の従業員だと主張しました。第一審から,火をつけてきたのは被告人であるという内容の被害者の証言の信用性が最大の争点となっていました。

 弁護人は,証人予定者の多くに直接面会し,話を聞いて事実関係を調査しました。また,被害者が意図的に嘘をついているわけではなく,酩酊状態と相まって,実際の事実とは異なる記憶が作られてしまった可能性を検証するため,供述心理学者に事件記録を検討していただき,意見書の作成や法廷での証言をお願いしました。第一審の公判では,被害者だけでなく,その場にいた従業員や,被害者の事件直後の言動をきいた救急隊員,警察官など,10名近くの証人尋問が行われました。

第一審の有罪判決は極めて常識に反し,ずさんなものでした。この度の控訴審の判決は,第一審が,その場にいた従業員の証言の信用性を個別に検討しなかったことを批判しました。また,被害者が酩酊状態にあったために事件当時の記憶がなく,他の機会に見た被告人の行動に関する記憶と,本件に関する記憶がすり替わってしまった可能性を指摘しました。被害者は事件直後,救急隊員に対し,被告人から火をつけられたと話していましたが,この被害者の発言も,もうろうとした被害者が救急隊員から誘導的な質問をされたことによりなされたもので,実際の記憶を反映したものでない可能性があることが指摘されました。いずれの判断も,弁護人の主張を受け入れるものでした。

第一審から,足をつかって情報収集し,専門家の適切な援助を受け,筋のとおった弁護方針をたてて尋問に臨んだ成果が表れたものだと考えています。また,供述心理学の知見を弁護活動に活かすことが非常に有用であることを示した点でも,大きな意義がある判決です。

 

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