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逮捕・勾留された 早期の釈放を目指す弁護活動
犯罪を犯したことを疑われて逮捕された後,さらに勾留という身体拘束を受けて取調べなどの捜査を受ける可能性があります。 (さらに…)
強盗殺人と強盗致死
強盗殺人と強盗致死の法定刑
強盗殺人とは,強盗をした犯人が人を殺害した場合です(必ずしも殺害相手は強盗の被害者に限られません。目撃した人を殺害した場合などを含みます)。
殺害に故意がある(殺意がある)場合が強盗殺人であり,殺意がないけれども暴行の結果人を死なせた場合が強盗致死になります。
刑法第240条は「強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。」と規定しています(前段は怪我をさせた場合で強盗傷人又は強盗致傷罪です)。
つまり,法定刑では,強盗殺人も強盗致死もいずれも「死刑又は無期懲役」のみが定められています。
ちなみに普通の殺人罪は「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」(刑法199条)であり,法定刑には5年以上の有期懲役が定められています。
日本の刑法では,故意に犯罪を犯したのか,故意ではなく結果的に犯罪を犯したのかで成立する犯罪も法定刑も異なるのが通常です。殺人罪と傷害致死罪は結果的に人を死なせたという点では一緒でも,法定刑は全く異なります(傷害致死は3年以上の有期懲役で,無期懲役や死刑はありません)。
これは,故意に犯罪を犯した人の方が責任が重いと考えられているからです。
強盗殺人と強盗致死の特殊性
しかしながら,強盗殺人と強盗致死は死刑又は無期懲役と同じ法定刑が定められています。
殺人罪よりも格段に重い刑が定められているのは,財産目当てで人を襲おうとする者は人の生命を軽視し命を奪う危険性が高いことから,より重い刑で抑止する必要があると考えられているからです。
ただ実際の量刑を見てみると,故意に殺害した強盗殺人と強盗致死では差があります。
被害者1名の事案で見てみると,強盗殺人ではほとんどが無期懲役となるのに対し,強盗致死では無期懲役が減軽され有期懲役となることも多く,強盗致死で無期懲役となるのは悪質な事案です。
強盗殺人罪で刑事裁判で争われること
強盗殺人罪は刑法に規定される罪の中でも最も重い犯罪の1つであり,被害者が1名でも無期懲役,2名以上になると死刑判決になることが多いです。
まず,強盗の意図がいつ生じたかが争いになります。
最初から殺して奪おうと計画し,殺害→物を取るという場合でも,物を取る→殺害という順番でも,いずれでも強盗殺人罪が成立します。
他方で,最初は物を取るつもりはなく,単純に恨みなどから殺害し,殺害したあとに金品奪取の意図が生じた場合,強盗殺人ではなく,窃盗,殺人罪が成立することになり,量刑が大きく異なることになります。
強盗殺人罪では,目撃者等がいることが少なく,いつ財物奪取の意図が生じたのかは,計画性や被告人の犯行前後の行動から推測するしかなく,難しい争点になることが多いです。
また,法定刑は一緒でも故意のあるなしで,強盗殺人か強盗致死かになり,量刑も変わってくることから,殺意の有無も争われることが少なくありません。
強盗殺人になると無期懲役の可能性が高く,現在の無期懲役の実情は,事実上終身刑に近い運用となっており,強盗致死罪となり有期懲役となるかどうかが,熾烈に争われることになります。
強盗殺人,強盗致死と共犯事件
また,強盗殺人や強盗致死事件は,複数の者が共犯関係となって実行されることが多い類型です。
一般的に共犯事件は,首謀者や主犯に重い刑が,従属的な関与の者により軽い刑が科されることになるため,逮捕起訴された者同士で,主従性が問題になることも多くあります。
主従性は,計画段階での関与態様,実際に果たした役割,得た報酬,人的関係等から判断されることになります。もちろん共犯同士に主従はなく,みんなが重い刑となることもあります。
強盗殺人,強盗致死の裁判員裁判
強盗殺人や強盗致死は起訴されると裁判員裁判となります。
重大事件であることから国選であれば2名,場合によって3名以上が選任されることがあります。
そして重大事件であり,犯罪成立上の争点や,共犯者の主従,量刑上の争点など多岐に渡る争いがあるのが通常で,証拠も多くなります。
裁判員裁判は必要的に公判前整理手続に付されますが,公判前整理手続に1年以上かかることも珍しくありません。
公判も,目撃者,共犯者,法医学者など複数の証人尋問が行われることが多いでしょう。
公訴事実に争いがない刑事裁判 第一審手続の流れ
逮捕され起訴されて初めて刑事裁判を受けることになった。
初めてのことでご不安な方やそのご家族の方もいらっしゃると思います。
裁判員裁判対象事件ではなく,起訴状の犯罪事実に争いがない場合,刑事裁判の審理は1回で終わり次回に判決言い渡しとなるのが多いといえます。
こうした刑事裁判の手続の流れや準備についてご説明します。 (さらに…)
前科がある場合 執行猶予判決が受けられるか
前科がある。また犯罪を犯して刑事裁判を受けることになってしまった。
この様に前科があって再犯を犯してしまった場合,一般的により重い刑になることが予想されるところだと思います。
このように前科があるとき,実刑判決とならずに懲役刑に執行猶予が付されるのはどういった場合でしょうか。 (さらに…)
第一回公判期日前の証人尋問の注意点
第一回公判期日前の証人尋問とは
公判期日に行われる証拠調べとして、証人尋問が行われます。被告人も出頭し、公開の法廷で証人に対し検察官や弁護人が尋問します。
ところが刑事訴訟法は、第一回公判期日より前に、つまり公判手続が始まる前に、証人尋問を行うことを認めています。刑事訴訟法226条、227条が定める、第一回公判期日前の証人尋問がこれです。
226条は、犯罪の捜査に欠くことができない知識を有すると明らかに認められる者が、捜査機関による取調べを拒んだ場合に証人尋問ができるとします。227条は、取調べでは任意に供述した(つまり取調べに応じて話をしていた)者が、公判期日では前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができない場合に、証人尋問ができるとします。
実務上特に問題になることが多いのが、227条のケースです。例えば被害者や重要な証言をすることが期待されている共犯者が、公判廷での証言を拒んだり、出廷しないことを予め明言している場合なども該当すると判断されることがあります。
この第一回公判期日前の証人尋問は、非公開の法廷で行われます。そして、被告人と弁護人の立会権がありません。刑事訴訟法は、「捜査に支障を生ずる虞(おそれ)がないと認めるとき」は、被告人、被疑者、弁護人を「立ち会わせることができる」としています。つまり裁判所の裁量次第で、立会が認められないこともあります。弁護人のみの立会が認められ、被告人本人が立ち会えないということも珍しくありません。立会を許された弁護人は、通常の公判廷での尋問と同様に、証人に対して反対尋問を行うことができます。ただし、証人尋問調書を謄写できない等の違いがあります。
弁護活動の留意点
被告人不在の場で、しかも十分な証拠の開示を受けられない段階で証人尋問を行うことは、証人の一方的な証言を許す機会にもなりかねず、被告人にとって極めて大きな不利益を招きます。事案にもよりますが、弁護人としては上記の証人尋問を満たす要件が認められるかについて厳しく精査し、反対意見を積極的にのべるべきです。もっとも、検察官の意見書や請求書を謄写することもできず、的確な反論が難しいケースも少なくありません。
第一回公判期日前に証人尋問が実施されることとなった場合は、同尋問での証言が、公判調書という形式で、その後の公判で証拠採用されることを見越して、尋問をする必要があります。尋問調書を読むだけで、裁判官、裁判員が、弁護人の尋問の意味や証人の信用性をなるべく的確に判断できるよう、質問の内容や訊き方に配慮する必要があります。
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