Author Archive
証拠の入手方法
1 刑事裁判のための証拠収集
刑事裁判は,法廷に提出された証拠によって有罪,無罪,あるいは有罪であれば量刑が決せられます。
証拠には,被害者や関係者などの証人,書証,物証があります。
刑事裁判で自らの主張を裏付け,あるいは検察側の主張を弾劾するための証拠の入手方法にはどのようなものがあるでしょうか。
2 証拠の開示
まず証拠を入手する基本となるのが検察官に対する証拠の開示請求です。
捜査機関は,警察,検察が,たくさんの捜査員を投入して関係者から話を聞いたり,証拠を押収します。また捜査機関ないし外部機関に委託して鑑定や実験なども行います。
それらの証拠は当然には弁護側には開示されません。
裁判では,検察官が自らの主張を立証するために必要だと考える証拠だけが請求され,それは弁護人にも開示されますが,検察官が必要ではないと判断したものは,開示されないため,弁護側から検察官に証拠の開示請求をする必要があるのです。多くのえん罪事件で,被告人側に有利な証拠が開示されなかったことが要因となっているように,きちんとした証拠の開示が何より重要なのです。
3 新たな証拠の収集法方
証拠の開示は,起訴された段階ですでに捜査機関によって収集された証拠の開示を求めるものです。
捜査機関が入手していない証拠の入手方法には,いくつかの方法が考えられます。
大きくわけて,① 捜査機関に入手させる ② 裁判所を通じて入手する ③ 弁護人自ら入手する ことが考えられます。
①,②の捜査機関や裁判所を通じて入手する場合には,当然その内容を検察官(場合によって裁判所)が把握することになります。
内容によっては,捜査機関,裁判所に知られる前に弁護側で把握して検討したいという場合もあるでしょう。
そのため,まずは③の弁護人が独自に入手することを検討します。
4 弁護人による証拠収集
弁護人による証拠収集は,例えば弁護人自身が関係者に話を聞いたり,現場に行ったり,各種機関に鑑定や実験を依頼することはできます。
問題は,相手が提出や聴き取りを拒んだときに,強制的に入手する方法がない,という点です。
弁護士には,弁護士法23条による弁護士会照会という制度があり,一定の場合には有効ですが,企業による情報管理の点から,開示されない場合も珍しくありません。
5 捜査機関,裁判所に入手させる
強制力によって入手するしかない場合,捜査機関や裁判所を通じて入手するしかありません。
捜査機関は,捜査事項照会という関係機関に対して照会をして回答を得るということを良く行っていますし,必要があれば,裁判所に捜索差押え令状を請求して,強制的に押収することも可能です。
捜査機関はもちろん弁護人の要求に応じる義務はないので,捜査機関に~のような証拠が必要だから収集して欲しい,という申し入れを行い,捜査機関の判断で収集することになります。
場合によって,公判前整理手続などで裁判官を交えて証拠の必要性を議論し,裁判官から促してもらうということもあります。
また,裁判所を通じた入手には,裁判所に対して,公務所等照会をしたり裁判所自身に差押え,提出命令等の申立をすることが可能です。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
裁判員裁判における量刑の判断
裁判員裁判は,一定の重大犯罪が対象となっています。
殺人,傷害致死,強盗殺人,強盗致死,強盗致傷,現住建造物等放火,強制性交等致傷などの罪です。
一般の市民から選ばれた裁判員が裁判官とともに有罪無罪の判断の他,有罪とする場合は言い渡す刑の重さも判断します。 (さらに…)

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
控訴や上告をすべきか
日本の刑事裁判
逮捕され起訴されると刑事事件の第1審が地方裁判所で行われることになります(一部の軽微な事件は簡易裁判所の場合もあります)。
第1審の裁判に不服があり控訴を申し立てると,事件は高等裁判所で第二審として審理されます。
控訴審の判決にも不服があり,上告を申し立てると最高裁で第三審審理されることになります。
このように,日本の刑事裁判は三審制を採用しています。
しかし,地裁,高裁,最高裁の審理は違う裁判官が判断するものの,その審理の内容は全く異なります。
裁判員制度の導入もあり,日本の刑事裁判における第1審重視の傾向は強まっており,控訴審での破棄率は10%前後で,上告審で破棄されるのは年数件というレベルです。
控訴すべきか
控訴すべきかどうかを考えるときには,
① 保釈されているか,されていなければ未決の日数
② 控訴審での見通し
を検討する必要があります。
前提として,控訴審は,原判決の言い渡し日から概ね1ヶ月半~2ヶ月後くらいで控訴趣意書をの期限が定まります。
控訴趣意書とは,第1審判決に対する不服な点を記載した書面です(通常は弁護人が作成します)。
控訴趣意書を提出して,そこから1ヶ月程度で第1回公判,さらに2週間~1ヶ月で判決期日というのが一般的な流れです。
そのため,控訴審の審理期間は概ね3ヶ月半~5ヶ月くらいで終了することがほとんどです。
拘束されている場合の未決勾留日数は約2ヶ月を超える部分が算入されることが多く,裏を返せば2ヶ月は無駄に拘束されるということになります。
第1審で言い渡された刑期が比較的短期である場合,控訴してダメだった場合は,社会復帰が2ヶ月遅れるということを意味しますので,その点を検討する必要があります。
また,控訴して拘束されている場合,地裁の管轄地の拘置所から東京,大阪,名古屋などの高裁所在地の拘置所に移送になります。
控訴審の見通し
控訴するかどうかという点において,最も重要な点は控訴して第1審が見直されるかどうかです。
確率的に言えば,10%なので可能性が高いとは言えません。
特に犯罪事実に争いはなく量刑が問題となる事案においては,量刑というものにはある程度の幅があり,高裁の裁判官から見て仮に若干重いなと思えても,同種事案などと比較して適正な幅の中に量刑が収まっているような場合には破棄されないことがほとんどです。
第1審判決が量刑の基礎とした事実自体に誤りがあるとか,第1審判決後に新たに示談が成立したなどの事情がないと,単に第1審判決の評価が不当で重すぎるといったことでは控訴審で見直される可能性は少ないといえます。
事実を争う否認事件の場合を考えてみると,控訴審の基本的性格が,第1審判決の当否を審査するものとされており,証拠調べをやり直すものではありません。
新しい証拠を取調べることには消極で,第1審の証拠から第1審の判決が正しいのかどうかが審査されることになります。
従って,控訴審の見通しを考える上では,第1審の証拠から認定した第1審の判断それ自体に,論理的,あるいは常識的に考えて不当な点があるといえなければならないのです。
上告すべきか
最高裁に上告すべきかどうか,という点についてです。
最高裁での上告審の審理期間は概ね控訴審と同じで,3ヶ月~5ヶ月であることが多いです。
ただし,未決は約4ヶ月を超える部分が算入される運用で,概ね4ヶ月で終了することから,未決が算入されない(4ヶ月社会復帰が遅れる)ということがほとんどです。
また,上告審では原則裁判自体が開かれず書面審理であることから,被告人は高裁所在地の拘置所から移送にはなりません。
そして,何より圧倒的に破棄される(見直される)ことがないという実情です。
刑期にもよりますが,上告するかどうかは十分慎重に検討しなくてはならないでしょう。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
接見等禁止を解除する
弁護士以外と面会できない
身体拘束をされている人にとって、家族と面会できる時間というのは、精神的にも大事な時間になります。時には、手紙のやりとりも、心の支えになると思います。
また、衣類や書籍を始めとして、家族から身体拘束されている人に対して、差入れすることも、重要です。
ですが、事件によっては、裁判所から「接見等禁止命令」といって、弁護人以外との面会や、物・手紙のやりとりが禁止される場合があります。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
公判で自首はどう扱われるか
自首とは何か
刑法は自首について「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」とされています(刑法第42条1項)。
減軽がされた場合、有期の懲役刑ですと、法律上言い渡される刑の上限(長期)及び下限が半分になります。例えば強制わいせつは「6月以上10年以下の懲役に処する」とされていますが、路上で強制わいせつをした後、我に返って反省して近くの交番に駆け込み、自首が成立したとして、減軽が認められると、「3月以上5年以下の懲役」が刑の選択の範囲となります。また、宣告できる刑の幅が変わるだけでなく、実際に宣告される刑が軽くなる傾向にあります。つまり自首したことが有利な情状とされ、刑を軽くする事情として扱われます。
どのような点が争われるか
自首が成立するためには様々な要件があります。刑法の教科書でもそれなりに頁をさいて解説されるような論点ですし、相当数の判例が蓄積されていますが、まず問題になりやすいのは「発覚する前」に自首したといえるかどうかです。犯罪事実とその犯人が捜査機関に判明している前に、犯人が、自分がした犯罪事実の存在や内容を捜査機関に告げる必要があります。
ですから、例えば先程の例で、事件後1時間たって犯人が最寄りの警察署に出頭し、さきほど路上で女性を襲ってしまった、と申告したとします。事件の3分後に被害女性が110番通報していたとすると、この申告の時点で犯罪事実の存在や内容自体は捜査機関に発覚していますが、犯人が誰かがまだ分かっていなかったとしたら、自首が成立し得ます。
他方で、出頭するかどうかを迷っていた結果、2日後になったとします。この時点で、前科の記録や目撃証言をもとに、捜査機関の方では犯人が誰か分かっていた場合、その後に出頭しても自首は成立しません。ですから、事件後時間が経たない間に出頭するのはとても重要です。
裁判では、出頭の時点でどこまで警察が犯罪事実や事件を把握していたか、ということや出頭との先後関係がシビアに争われることもあります。必要であれば、捜査を担当していた警察官を尋問し、出頭の時点で判明していた事実の内容を明らかにしなければならないこともあります。
また、自発的に行ったかどうかも、争点となることがあります。自首と似て非なるのは、警察官から追求を受けて、罪を認めたようなケースです。ですから先程の例でいうと、事件を起こして逃走を開始した3分後に、犯人がたまたま路上をパトロールしていた警察官から職務質問を受けたとして、その挙動を怪しまれて追求され、観念して「先程路上で女性を襲ってしまいました。」等と認めた場合には、自首は成立しないと言えます。
このように自首が成立するかについては様々な論点があり、自首に関する主張を認めさせるには、深い法律知識や尋問能力等が要求されます。弁護人も自首が成立する事案なのかを仔細に見極める必要があります。
自首での減軽を求める場合の注意点
さらに自首を主張する上で重要なのが、法律が「その刑を減刑することができる」としている点です(刑法第42条1項)。つまり自首が成立するとしても、刑を減軽しない、という判断がなされることもあるのです。さらに情状においても、自首をそこまで大きく評価しない、との判断がなされ、結果的に刑がそこまで軽くならない、ということもあります。
自首で減軽がなされる根拠としては①自首がされれば真相が解明されることから、減軽という恩恵を与えてこれを促進するという政策的な根拠②自ら犯罪事実を告げて、自身を訴追するよう求める点で、向けられている非難が減少する、との2点が挙げられることが多いと言えます。減軽が認められない事案は、この趣旨に反するような行為をしているケースが多い傾向にあります。例えば自首はしているものの、直後に事件に関係のあるラインメッセージを消去して証拠隠滅を図った、というような場合などです。自首をしなくても速やかに犯罪事実や犯人は捜査機関に判明したはずであるから、自首がなされた意味は大きくない、というような主張が検察官からなされることもあります。
弁護人は自首が成立する場合でも安心せず、なぜそれを根拠に刑を軽くしてよいか、丁寧に主張立証する必要があります。特に裁判員裁判では、上記のような自首制度の趣旨を裁判員に分かりやすく説明した上で、政策的な観点からも責任減少の観点からも、軽い刑を言い渡さなければ法の趣旨に反する、との主張を的確に行わなければなりません。
なお、現在の裁判実務では、刑の大枠は犯罪行為自体に関する事情(犯情)に基づいて定められ、自首などのそれ以外の事情は、あくまで調整要素として扱われます。しかし執行猶予が認められるかがシビアに争われる事案などでは、自首の成否やそれに基づく減軽の可否が決め手となることもあります。弁護人はあきらめずに自首に関する主張を尽くし、依頼者のために少しでも軽い結論を求めていかなければなりません。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
強盗致傷罪で逮捕・勾留 早期釈放の弁護活動
強盗致傷罪は裁判員裁判対象事件です。刑法では無期懲役,または6年以上の有期懲役と重い刑が定められています。
強盗致傷罪で逮捕,勾留された事件について,東京ディフェンダー法律事務所の弁護士が弁護人の一人として活動し裁判官の勾留決定に対する準抗告が認められ早期に釈放されました。 (さらに…)

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
久保有希子弁護士が司法研修所の刑事弁護教官に就任
当事務所の久保有希子弁護士が、5月から最高裁判所司法研修所の刑事弁護教官に就任しました。 (さらに…)

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
否認事件と公判前整理手続
否認事件とは
起訴された犯罪について検察官の主張と弁護側で争いがある場合を否認事件といいます。
犯人でない,という無罪主張だけでなく,殺人未遂で起訴されて行為は間違いないものの殺意はなかったから傷害罪であると主張する場合もあります。
また,事実の争いだけではなくて,正当防衛や責任能力の有無という法的評価が争いになることもあります。
このような犯罪の全部又は一部の成立に争いがある場合を否認事件といいます。
これに対し,起訴された犯罪が成立することに争いがなく,主たる裁判のテーマが被告人に科される量刑である場合を量刑事件や自白事件と言ったりします(なお,量刑事件といっても事実に全く争いがないというわけではありません。例えば殺人事件で起訴された場合に,検察官は保険金目的であると主張し弁護側が単なる怨恨であると主張するようなケースです。殺人事件においては動機がなんであるかは刑期を左右する大きな事情であり,事実の争いが大きな意味を持つことも少なくありません)。
公判前整理手続とは
否認事件を公判で闘う場合には,公判前整理手続に付してもらうことが出発点として重要です。
公判前整理手続とは,公判が始まる前にどのような点が争点となるか,どのような証拠調べをするかを整理するための手続です。
重大事件を対象とする裁判員裁判対象事件では,必要的に公判前整理手続が行われることになりますが,裁判員裁判対象外の事件では,基本的に公判前整理手続に付すことを当事者から請求して,裁判所が決定することになります。
刑事訴訟法 316条の2 1項
裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。
公判前整理手続に付された場合とそうでない場合の違いは,大きく以下の3点です。
① 公判前整理手続で当事者双方は主張を明らかにする必要がある
② 原則として取調べて欲しい証拠は公判前整理手続で請求しなければならない
③ 検察官に対して証拠開示を求めることができ,証拠の一覧表も交付される
公判前整理手続に付すことの重要性
上記の①,②の主張や証拠を公判前整理手続で出し合うという点は,公判前整理手続の大きな特徴です。
そもそも公判前整理手続は,一般市民が裁判員として参加する裁判は集中的に行わなければならないことから,予め判断すべき事項(争点)とそのためにどのような証拠を調べるかを決めておく必要があることから,設けられた制度です。
そのため,
① 検察官が証明予定事実(立証使用とする事実)
② 検察官の証拠調べ請求
③ 弁護人の予定主張(法廷で予定している主張)
④ 弁護人の証拠調べ請求
が行われることになります。
そして,重要なことが,証拠調べ請求は,公判前整理手続終了後はやむを得ない事由がない限り出来ない,という点です。
折角整理して公判をはじめたのに,さらに証拠請求ができるとすれば,裁判をやり直さなければならない事態にもなりかねないからです。
公判前整理手続に付すべき大きな理由の1つが,この証拠制限なのです。
検察官が公判を見てから,補充捜査をしたり,新たな証拠を請求することを封じることができるのです(弁護側も同様です)。
証拠開示の重要性
さらに公判前整理手続に付すべきもう一つの理由が,証拠開示です。
犯罪が疑われた場合,警察,検察は,膨大な捜査員と税金を投入して,証拠を集めます。必要があれば強制的に押収することもできます。
これに対し弁護側は,強制力もマンパワーもなく,国選弁護などでは経済的資力もありません。
もちろん事件の中には,弁護人が苦労の既に証拠を探し出したり,作り出して無罪に繋がるという場合もありますが,多くは,捜査機関が収集した証拠の中に活路を見いだすのです。
しかしながら,検察官は、自らの主張を裏付ける証拠のみを裁判所に請求しますから,弁護側に必要な証拠は当然には手に入れることができず,証拠開示を求めていかなければなりません。
しかも,そもそもどのような証拠を集めたのかすら弁護側には分かりません。
そこで公判前整理手続に付されると,捜査機関が収集した証拠の一覧表というものを交付させることができ,証拠開示の手がかりになるのです。
また,公判前整理手続に付された事件では,類型証拠開示請求や主張関連証拠開示請求という制度が設けられており,検察官との間で証拠開示を巡って対立したときには,裁判所に証拠開示命令を出すよう請求することもできます。
このようなメリットから,否認事件においては公判前整理手続に付すことを求めることが充実した弁護活動のために必要なのです。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
持続化給付金詐欺の捜査弁護
新型コロナ禍において、持続化給付金詐欺が、急速に増えています。ニュースで目に触れる機会も多くなりました。持続化給付金詐欺に関わってしまった人も、数多くいることが予想されます。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。
大麻事案の特徴
大麻事案の特徴
大麻取締法の改正が議論されています。現在日本で大麻を所持することは刑罰の対象となりますが、大麻を使用しただけでは罰則はありません。他の代表的な薬物、例えば覚醒剤やコカイン、MDMAなどが、所持についても使用についても罰則の対象となるのとは異なります。
違いはそれだけではありません。大麻の所持事案に関しては、他の薬物所持の事案と比べ、運用上顕著な特徴があり、弁護人もその違いを理解した上で適切な方針選択をする必要があります。
微量であれば不起訴になることがある
薬物所持事案で争いのない場合、日本ではほとんどの事案で公判請求という処分が検察官からなされます。すなわち、検察官が起訴し、正式に公判が開かれ、有罪判決を受けるというのがもっとも多いパターンです。
大麻を所持していたとしても、持っていた量が非常に少なければ、不起訴になることがあります。明確な基準があるわけではありませんが、大麻の1回分の使用量とされている約0.5g(但し、乾燥大麻の場合。大麻樹脂の場合は約0.1g程度。)を下回る所持量の場合には、所持の事実に争いがなく、被疑者本人が認めていたとしても、不起訴処分(起訴猶予)になることがしばしばあります。
起訴猶予処分とは、犯罪事実の認定に問題がないことを前提に、起訴することによる弊害等を考慮して敢えて起訴しない処分です。起訴するか否かの判断においては、検察官に極めて大きな裁量が認められており、上記のような処分傾向の背景にどのような考え方があるのか、正確に知ることは困難ですが、1回使用分にもみたない微量の所持は、違法性が決して高くないことを考慮しているものと推測されます。
もっとも、このような微量な所持事案が起訴猶予となるのは、ほとんどが初犯の場合です。薬物事犯の前科がある場合などでは、微量の大麻所持であっても、起訴されることはよくあります。
他の薬物ではどうでしょうか。覚醒剤の所持の場合ですと、初犯で、かつ所持量が1回分にもみたないような微量であったとしても、所持の事実に争いがないのであれば起訴されることがほとんどです。大麻とは異なります。所持している薬物によって、正反対の結果となりうるのです。
他によくみるケースは、覚醒剤に加えて、少量の大麻を所持しているようなケースでは、覚醒剤の所持のみが起訴され、大麻の所持については起訴されないというものです。覚醒剤の所持について公判が開かれる以上、大麻の所持についてはわざわざ起訴する価値に乏しい、という判断が働いているものと思われます。
他の薬物事案と比べて勾留がされにくい
日本では捜査段階で安易に勾留決定がなされます。勾留とは、最大20日間に及ぶ、起訴前の身体拘束です。軽微な事案であっても、必要性の乏しい勾留が日常的になされているのが現状です。特に薬物事犯では、売人等の背後に組織的な背景が存在すると考えられること等から、ほとんどの事案で勾留がなされる一方、在宅のまま捜査がなされる場合は例外にとどまってきました。
しかし、大麻所持の事案については、以前と比べて勾留請求が却下される事案が増えてきています。仮に勾留がついたとしても、勾留延長請求が却下され、勾留から10日目で釈放され、在宅捜査に切り替えられるという事案も相当増加しているように思えます。奇妙なことに、これも大麻所持事案特有の傾向で、例えば覚醒剤やコカインの所持の事案では、(例外はあるとしても)依然として漫然と20日間の勾留がなされる事案が圧倒的に多数です。
そもそも単純な薬物所持事案であれば、証拠関係も極めてシンプルです。現行犯逮捕事案であれば、所持品検査等により所持の態様は明らかとなっていますし、犯罪事実の存在も明白です。自分一人で使うために持っていた、というようなケースでは、関係者との口裏合わせ等の罪証隠滅がなされる可能性も乏しく、勾留の要件も必要性も満たされない場合が多いと言えます。つまり大麻の単純所持の事案で勾留がなされないのは、法律上の要件からも至極当然だといえるケースが多いと思われますし、他の薬物、例えば覚醒剤の所持事案でも同様のはずです。勾留の判断においては、大麻のみを特別扱いする理由は見出し難いのです。
今後、勾留に関する運用は変わり得ます。他の薬物の所持事案についても、安易な勾留は抑制されるようになるかもしれません。いずれにせよ弁護人は、最先端の運用や相場観を踏まえつつも、諦めずに粘り強く不当な勾留を回避するための働きかけを行っていくべきです。

東京・中央区にある東京ディフェンダー法律事務所では、刑事事件のご相談を数多くお受けしています。突然の逮捕や捜査で不安を抱える方の力になれるよう、ひとつひとつの事件に丁寧に向き合ってきました。痴漢や万引き、薬物事件から裁判員裁判の対象となる重大な案件まで、幅広いご依頼に対応しており、これまでに多くの不起訴・無罪の結果を導いてきた経験があります。東京を中心に、関東近郊からのご相談にも対応しています。どんな状況でも、まずはお気軽にご相談ください。